第79号
育児・介護休業法の改正 ~法改正のポイントの解説~
POINT
- 男女ともに仕事と育児・介護の両立を図るべく、育児休業、介護休業の制度が拡充されています。
- 改正事項は多岐にわたり、企業等の規模にかかわらずすべての企業等を対象としたものがほとんどです。
- 改正を踏まえた社内規定や体制の整備が必要です。
1 はじめに
2024年5月、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置を拡充すること等を目的として、育児・介護休業法1及び同施行規則2が改正され、2025年4月1日から段階的に施行されています(以下、改正後の育児・介護休業法を「改正法」と、同施行規則を「施行規則」といいます。また、本稿では、2025年10月1日施行の条文を引用しています。)。改正事項が多岐にわたっており、企業等の規模にかかわらず適用されるものがほとんどであることから、改正に応じた社内規定の見直し等の対応が必要です。本稿では改正のポイントについて説明します。
2 子の看護休暇の見直し・所定外労働の制限の対象拡大・育児のためのテレワーク導入(2025年4月1日施行)
⑴ 子の看護休暇の取得範囲を拡大
子の看護休暇に関し、対象となる子の範囲が、これまで小学校就学の始期に達するまでであったところが、小学校3年生の修了時まで拡大し、また、感染症に伴う学級閉鎖や、入園・入学式、 卒園式への出席が休暇取得事由として追加されるなど、取得範囲が広がります(改正法16条の2、施行規則33条、33条の2)。
さらに、継続雇用期間6か月未満の労働者についても、子の看護休暇の取得がより認められやすくなりました(労使協定を締結することにより、子の看護休暇の対象外とすることができる範囲について、継続雇用期間6か月未満の労働者が除外されることになりました(改正法16条の3・2項)。)。
なお、本改正で取得事由が拡大されたことにより、「子の看護休暇」から、「子の看護等休暇」と制度の名称が変更となります。
⑵ 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大について
これまでは、3歳未満の子どもを養育する労働者から申し出があった場合、その労働者に、所定労働時間を超えて勤務させることが原則として禁止されていました。今回の改正により、申し出が可能となる労働者の範囲が拡大され、小学校就学前の子を養育する労働者まで含まれることになりました(改正法16条の8・1項)。
⑶ 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク等が追加されたことについて
労使協定において、短時間勤務制度の対象外とした労働者 (業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者)に関して、事業主は代替措置を講じなければなりません。この代替措置には、育児休業に関する制度に準ずる措置、フレックスタイム制、始業時刻の変更等がありますが、ここにテレワーク等が追加されました (改正法23条2項1号)。
⑷ 育児のためのテレワーク導入について
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講じることが、事業主に努力義務化されます(改正法24条2項)。
3 育児休業取得状況の公表義務適用拡大(2025年4月1日施行)
改正前の育児・介護休業法では、常時雇用する従業員が1000人を超える事業主に対して、 男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられていました。 本改正では、常時雇用する従業員が300人を超える事業主にまでその範囲が拡大されています(改正法22条の2)。公表内容の詳細や、公表方法、計算例については、厚生労働省のHP3もご確認ください。
4 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(2025年4月1日施行)
介護休暇に関して、これまでは、①週の所定労働日数が2日以下の労働者及び②勤続6か月未満の労働者については、労使協定により、介護休暇を取得できない労働者として定めることが認められていましたが、本改正により、子の看護等休暇と同様、②継続雇用期間6か月未満の労働者についての除外規定が廃止となり、 介護休暇が認められる労働者の範囲が拡大しました (改正法16条の6・第2項)。
5 介護離職防止のための措置等(2025年4月1日施行)
⑴ 介護離職防止のための雇用環境整備について
労働者から、介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のうち1つ以上の措置を講じなければなりません(改正法22条4項、施行規則71条の4、71条の2)。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者への介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
⑵ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等について
ア 介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は、介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません(改正法21条4項、施行規則69条の10)。
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③ 介護休業給付金に関すること
個別の周知・意向確認の方法は、①面談、②書面交付、③FAX、④電子メール等のいずれかです。①面談は、オンラインでの面談も可能です。③FAX、④電子メール等は、労働者が希望した場合のみです(施行規則69条の6、69条の3・1項)
イ また、労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません(改正法21条5項、施行規則69条の12、69条の10)。
| 対象者 | ①労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間) ②労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間 のいずれか |
| 情報提供事項 | ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容) ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など) ③介護休業給付金に関すること |
情報提供の方法は、上記「5⑵ア」 の記載と同様です。
⑶ 介護のためのテレワーク導入について
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます(改正法24条4項)。
6 柔軟な働き方を実現するための措置等(2025 年 10 月1日施行)
⑴ 事業主は、過半数労働組合や過半数代表者の意見を聴いて職場のニーズを把握した上で、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下に記載した5つの講ずべき措置の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります(改正法23条の3・1項、施行規則75条の3)。労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
① 終業時刻等の変更
② テレワーク等(10日以上/月)
③ 保育施設の設置運営等
④ 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
⑤ 短時間勤務制度
⑵ 事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、柔軟な働き方を実現するための措置として、上記「6 ⑴」で選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません(改正法23条の3・5項、施行規則75条の8、75条の9)。この際、利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められませんので注意が必要です。
| 周知時期 | 労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで) |
| 周知事項 | ①事業主が前記「6⑴」で選択した対象措置(2つ以上)の内容 ②対象措置の申出先(例:人事部など) ③所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度 |
周知・意向確認の方法は、上記「5⑵ア」の記載と同様です。
7 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮(2025年10月1日施行)
⑴ 事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません(改正法21条2項、施行規則69条の7)。
意向聴取聴取内容
| 意向聴取の時期 | ①労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき ②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間 (1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで) |
| 聴取内容 | ①勤務時間帯(始業および就業の時刻) ②勤務地(就業の場所) ③両立支援制度等の利用期間 ④仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等) |
意向聴取の方法は、上記「5⑵ア」の記載と同様です。
⑵ 事業主は、⑴により聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければなりません(改正法21条3項)。必ずしも労働者の意向どおりにしなければならないというわけではありませんが、検討の結果、労働者の意向に沿った対応が困難な場合には、困難な理由を説明するなどの丁寧な対応を行うことが重要です。
8 おわりに
今回の育児・介護休業法の改正は多岐にわたっており、企業としては、就業規則等の社内規程の見直し、制度の整備や周知・意向確認の実施など、細かな対応が必要です。本稿は概要のご紹介にとどまりますが、厚生労働省のホームページでは、改正事項が一覧表にまとめられているほか4、詳細に解説されています5。また、本改正に対応した規定例も紹介されています6ので、参考になります。
育児・介護休業関連の制度は頻繁に改正され7、キャッチアップするのも一苦労と思われますので、専門家を活用するのも一つの手段です。当事務所は、雇用に関する案件、相談に多数対応しておりますので、ご不明な点がございましたら、当事務所にご相談ください。
1 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福利に関する法律
2 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
3 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533_00006.html
4 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
5 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001407488.pdf
6 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
7 2025年4月から、「出生後休業支援給付金」が創設される(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001372778.pdf)など、制度の拡充がより一層進んでいます。