第81号
「下請法」は「取適法」へ ~2026年1月から改正下請法(取適法)が施行されます~
POINT
- 下請法 (下請代金支払遅延等防止法) が改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」 (通称:取適法)に変わります。
- 従来の資本金額による基準に加えて、新たに「従業員数」 による基準が追加され、適用対象取引に「特定運送委託」が追加されます。
- 協議に応じない一方的な代金決定や手形払等が禁止されます。
1 はじめに
下請法 (下請代金支払遅延等防止法) が改正され、その名称も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称は「中小受託取引適正化法」又は「取適法」です。本稿では以下「取適法」といいます。)に変更されます。
取適法の施行日は2026(令和8) 年1月1日に迫っています。本稿では、適用対象の拡大や禁止行為の追加など、取引に与える影響が大きい改正のポイントに絞ってご説明します。
2 改正の背景・趣旨
近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、物価の上昇を上回る賃上げを実現するためには、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図っていくことが重要です。
そこで、価格転嫁・取引適正化の徹底に向けて、従来の資本金額による基準に加え、新たに 「従業員数」による基準が追加され、適用対象取引に「特定運送委託」が追加されるなど、適用対象が拡大されるとともに、手形による代金支払の禁止、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止など、新たな規制が追加されます。 なお、今回の改正により、従来の「下請」「親事業者」という上下関係を想起させる用語は、以下のように改正されます。
「下請事業者」 → 「中小受託事業者」
「親事業者」 → 「委託事業者」
「下請代金」 → 「製造委託等代金」
3 適用対象の拡大
⑴ 対象取引への「特定運送委託」の追加
従来、下請法の適用対象となる取引は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」 「役務提供委託」の4つでしたが、取適法では、これに「特定運送委託」が加わります。
新しく加わる「特定運送委託」とは、事業者が、販売する物品、製造を請け負った物品、修理を請け負った物品又は作成を請け負った情報成果物が記載されるなどした物品について、その取引の相手方(当該相手方が指定する者を含む。)に対して運送する場合に、その運送の行為を他の事業者に委託することをいいます。
⑵ 適用基準への「従業員数基準」の追加
取適法では、適用対象となる事業者の基準に、従来の資本金額による基準に加えて、新たに従業員数による基準が追加されます。
① 「製造委託」「修理委託」「特定運送委託」
「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る)
〈新設の基準〉常時使用する従業員300人超の事業者が常時使用する従業員300人以下の事業者(個人を含む)に委託する場合

② 「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理を除く。)
〈新設の基準〉常時使用する従業員100人超の事業者が常時使用する従業員100人以下の事業者(個人を含む)に委託する場合

(出典:公正取引委員会取適法リーフレット1)
4 禁止行為の追加
取適法では、中小受託事業者の利益保護のため、以下のとおり、委託事業者の4つの義務と11の禁止行為が定められています。
⑴ 委託事業者の義務
① 中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等
② 給付内容、代金の額など取引に関する書類の作成・保存義務
③ 製造委託等代金の支払期日を受領後60日以内のできる限り短い期間内に定める義務
④ 遅延利息(年率14.6%)の支払義務
⑵ 禁止事項
① 受領拒否の禁止
② 製造委託等の代金の支払遅延の禁止 (支払手段として手形払等を用いること)
③ 製造委託等代金の減額の禁止
④ 返品の禁止
⑤ 買いたたきの禁止
⑥ 購入・利用強制の禁止
⑦ 報復措置の禁止
⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
⑨ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑩ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
⑪ 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
⑶ 今回の改正で定められた禁止行為
① 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に製造委託等代金を決定することが禁止されました。
委託事業者が中小受託事業者からの価格協議(値上げ等)を求められたにもかかわらず何らの対応もせずにいると、公正取引委員会から勧告等を受け、公正取引委員会のホームページで公表される可能性があります2。
委託事業者が中小受託事業者から価格の協議の求めを受けた場合には、協議に応じるとともに、書面やメール等で回答をすることが必要です。
② 手形支払いの禁止
上記(2)②の一環として、製造委託等代金の支払手段について、手形払が禁止されます。また、その他の支払手段(電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング等)など)についても、支払期日までに製造委託等代金の額に相当する額の金銭を得ることが困難なものは禁止されます。
当事者間の合意に基づいて手形を交付しても、受領後60日以内に代金相当額を支払わなければ支払遅延に該当し、年率14.6%3の支払義務を負うことになります。
5 おわりに
取適法は令和8年1月1日から施行されます。上記のように下請法よりも適用範囲が拡大され、禁止行為が追加されますので、従来下請法の適用がなかった取引や問題とされていなかった行為が今回の改正で適用対象、禁止行為となります。
つきましては、既存の取引の内容を確認して、取適法の適用の有無や対応の要否をご確認いただき、判断が難しいものがあれば弊所までご相談ください。
1 https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
2 https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/index.html
3 この遅延利息は、民法、商法や当事者間で合意して決めた利率に優先して適応されます。